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優劣感 〜繋ぐ、別れる、繋ぐ〜
ムーア界。ツンデレこじらせた法術士さん今際のキワ。
********** 『それ』を見上げる夢を何度も見た。 見上げた先には、常に苛立ちしか感じない相手―――従兄弟―――の顔。 何故かいつも悲しそうな顔だった。 精悍で口数の少ない従兄弟だが、確かな強さを持っている。 そんな顔、微塵も似合わない。 そう、思っていた。 信じていた。 「……ッ、離せ、Z」 「生憎だが貴様の命令は聞かん」 ティターンの魔塔・金色の間。 ここはすでに崩壊寸前だった。 未だ崩れていない壁にZは右手で己の剣を刺し、左手で私の左手首をつかんでいた。 このままでは、共倒れになる。 ……なぜか、それだけは嫌だった。 「私には、このファンネル=スケールがある。貴様の手なんかいらん」 それは事実だけど、ウソだった。 背中のファンネル=スケールはとっくに魔力が尽きていて、魔物の攻撃を払う事もおのれの魔法を増幅する事も不可能だった。 いつもならわずかな魔力でも出来る、自分1人浮かせる事さえも出来ない。 ただの、お荷物に成り下がっていた。 それでも、口から出る言葉はコレなのだ。 こんな時でさえ、素直になるのは難しいらしい。 「わ……私が救ってやった命を貴様は、無駄にすると言うのか」 偵察先で重傷を負った話を持ち出してみた。 いよいよ私は追い詰められているらしい。過去の事ばかり、頭に浮かぶ。 「無駄かどうかは俺が決める」 けれど、帰ってくるのはあいも変わらずの返事で。 ……だから。 「……ZZが待ってる。だから」 金色の瓦礫とともに、ZZは親衛隊の1人とともに奈落へと落ちて行った。 そして、アレックス殿も。 ……程無く我々も、落ちるだろう。 Zの右腕が剣を刺している壁が、崩落するその時に。 あるいは、Zの腕が力尽きるその時に。 「バーサル殿はまだ戦っている。お前なら、お前の剣なら、だから……」 今、私の手を離せば、Zは上に登って行ける。そのくらいの余力はあるはずだった。 私が欲しかった才を持つ、無口な従兄弟。 こんなところで、止まってほしくなかった。 「―――ν」 だけど、ひどく切ない声で呼ばれて、何も言えなくて。 「……俺を1人にする気か」 沸騰寸前だった頭に、氷水をブッかけられた気分だった。 「―――……」 「俺を1人にして、ZZやアレックス殿のいる所に行く気か」 「ぜ……Z……」 「そんなの―――」 ―――俺が許すとでも―――? 「やめて……Z」 きつく握られた左腕が震える。 もう時間が無い。 それだけは確実だった。 「お願い、もうやめて、離して」 「いやだ」 「Z、おねがい、だから」 「俺が剣の腕を磨き続けたのは―――」 瓦礫の崩れる音。 そして、夢で散々見たZのあの悲しい―――愛しい―――顔。 ・・・・・・。 |