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優劣感 〜繋ぐ、別れる、繋ぐ〜
ムーア界。ツンデレこじらせた法術士さん今際のキワ。



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『それ』を見上げる夢を何度も見た。
見上げた先には、常に苛立ちしか感じない相手―――従兄弟―――の顔。
何故かいつも悲しそうな顔だった。
精悍で口数の少ない従兄弟だが、確かな強さを持っている。
そんな顔、微塵も似合わない。
そう、思っていた。
信じていた。



「……ッ、離せ、Z」
「生憎だが貴様の命令は聞かん」

ティターンの魔塔・金色の間。
ここはすでに崩壊寸前だった。
未だ崩れていない壁にZは右手で己の剣を刺し、左手で私の左手首をつかんでいた。
このままでは、共倒れになる。
……なぜか、それだけは嫌だった。

「私には、このファンネル=スケールがある。貴様の手なんかいらん」

それは事実だけど、ウソだった。
背中のファンネル=スケールはとっくに魔力が尽きていて、魔物の攻撃を払う事もおのれの魔法を増幅する事も不可能だった。
いつもならわずかな魔力でも出来る、自分1人浮かせる事さえも出来ない。
ただの、お荷物に成り下がっていた。

それでも、口から出る言葉はコレなのだ。
こんな時でさえ、素直になるのは難しいらしい。

「わ……私が救ってやった命を貴様は、無駄にすると言うのか」

偵察先で重傷を負った話を持ち出してみた。
いよいよ私は追い詰められているらしい。過去の事ばかり、頭に浮かぶ。

「無駄かどうかは俺が決める」

けれど、帰ってくるのはあいも変わらずの返事で。
……だから。



「……ZZが待ってる。だから」



金色の瓦礫とともに、ZZは親衛隊の1人とともに奈落へと落ちて行った。
そして、アレックス殿も。
……程無く我々も、落ちるだろう。
Zの右腕が剣を刺している壁が、崩落するその時に。
あるいは、Zの腕が力尽きるその時に。

「バーサル殿はまだ戦っている。お前なら、お前の剣なら、だから……」

今、私の手を離せば、Zは上に登って行ける。そのくらいの余力はあるはずだった。
私が欲しかった才を持つ、無口な従兄弟。
こんなところで、止まってほしくなかった。

「―――ν」

だけど、ひどく切ない声で呼ばれて、何も言えなくて。










「……俺を1人にする気か」










沸騰寸前だった頭に、氷水をブッかけられた気分だった。

「―――……」
「俺を1人にして、ZZやアレックス殿のいる所に行く気か」
「ぜ……Z……」
「そんなの―――」





―――俺が許すとでも―――?





「やめて……Z」

きつく握られた左腕が震える。
もう時間が無い。
それだけは確実だった。

「お願い、もうやめて、離して」
「いやだ」
「Z、おねがい、だから」
「俺が剣の腕を磨き続けたのは―――」

瓦礫の崩れる音。



そして、夢で散々見たZのあの悲しい―――愛しい―――顔。










・・・・・・。


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