W5・あの対決。
エンカーは言った。
「お前と戦っているその時だけが俺の全てなんだ」と。
クイントは言った。
「ボクは君と戦うためにここにいる」と。
パンクは何も言わなかった。
パンクは、僕と戦う事しかプログラムされていなかった。
足取りが、重い。
この先に進めば間違いなくDr.ワイリーが待っている。
今回の騒動を引き起こした張本人が。
そしてその前に立ちはだかるであろう―――彼女も。
「誰も…いない?」
何もない、だだっ広い部屋に出た。
部屋の真ん中あたりまで来ると、今通ってきた通路にシャッターが下りた―派手な音を立てて―。
「あ!」
「……来たの、か」
シャッターの方に気を取られていた僕は、声がどこから飛んできたのかは瞬時にサーチ出来なかった。
それを察してか声の主は、「上だよ、上」と僕を呼び、促してくれた。
「バラード……」
「兄ィ達に会ったんだろ? なのに何でここまで来たの?」
「僕は、……僕は…」
言葉につまり項垂れる僕。
金属的な音を響かせて、バラードが僕の立っている前に降り立つ。
「……ロック」
「バラード、僕は…」
バラードの手が、僕の胸に触れる。
「僕…は……」
「……」
刹那。
派手な爆音―僕の胸元から―が僕のセンサーに捉えられた。
「う…わぁあああああ!」
ガシャン!!
ゴロゴロゴロ……。
「大した強度だね、ロックマン」
バラードが僕の胸元に触れていた手から、バラードクラッカーを放ったのだった。
「戯言は今更やめろよ。アタシ―――俺はR.K.N.03バラード。ロックマンキラーの名を冠した、お前―ロックマン―の死刑執行者。お前がロックマンである限り、俺は―――」
「バラード、やめてくれ!!」
僕の静止の声は、間違いなく彼女に届かない。
そうだと分かっていても叫ばずにはいられなかった。
「―――お前を破壊する!!」
***************
瓦礫の山が、先程のだだっ広い部屋に広がっている。
宙に待った塵埃が、靄の様に部屋を覆っている。
バチバチ、と。
ショートしている音が聞こえた。
「バラード……」
「いいんだよ、コレで」
僕の前に転がっているバラードは、右腕と左足全部と右足の膝から先が無くなっていた。
心臓部にスパークが走っている。放っておけば、程無く爆発するだろう。
「さ、早く行きな。アンタは間違ってない。間違ってないんだ。だから俺―――アタシ達の事を気にかける必要はない。これっぽっちもないんだ」
「でも…君は……」
「運が良ければまた会えるさ。何せアタシ達を造った人は、悪運の強さだけは間違いなく世界1だからね」
「サ、何ぐずぐずしてる。早く行きな。モタモタしてたら逃げられるよ」
先に少し進んだ所で。
遠くで、爆音が、聞こえた―――。
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